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  3. 畳を語る。:(畳の)ヘリの存在感。

文・前田敏康(前田畳製作所代表)

海外のある高級ブランドのデザインは日本の家紋や市松模様が基になったと言われています。そのブランドにその柄の皮を畳の縁(へり)に使用させて欲しいと連絡したことがあります。かれこれ20年前のこと。折り返しすぐに、本当にすぐに「絶対にやめてください!」と何度も念押しされて断られたっけ。奇をてらったわけではなく、畳の縁を少しでも楽しく選んでもらいたいという真剣な思いから。

ご家族の形見の着物を縁として付けたこともあります。気に入った色が見つかったからと持ち込まれたカーテン生地も。豊富な色から選ばれたのがそのカーテン生地の裏!表ではなく裏の色!そこまで探された行動力に脱帽でした。ご利用者の想いを想像しながら、お互いに楽しみながらそれに応えることができたらこんなに幸せなことはないですね。「大地から海、そして太陽へ」をイメージされたコミュニティールームには、海からの日の出を一緒に考え裁縫の生地屋さんで何種類もの布生地を購入。

ロゴを特別に織り上げて作ったことも。

上:海の家、下:キッザニア、のロゴを織り上げています。 

でも、畳の縁がなくなる?
最近の住宅ではへりの無い畳が増えています。琉球畳、いわゆる“ヘリ無し”畳が増えているのです。(本当の琉球畳についての説明は省きます) ちょっと前までは広義においても四角四面な畳を飾ろうとすると、上述した特別なことを除いて「縁(へり)」に注目が集まっていました。だから新しい色柄がどんどん出てきて。見本も山のように揃えていました。お客様も迷いすぎて決まらないくらい。 それが今では畳の縁を無くして、市松敷きで色の強弱をつけたり、さらには畳そのものに色を付けたり。確かに、ザ和室というよりリビングと一体化したようなお部屋には相性が良く、お洒落な空間になります。当然私もたくさん製作し納品させて頂いております。でもちょっと待って。

そもそも縁って。
昔は身分に応じて縁が決まっていて、庶民は縁を付けられなかったり(そもそも贅沢品ですから)。今でも天皇陛下専用のヘリがあって。茶道にはヘリが必要で。縁を踏んではいけなくて。祝儀・不祝儀敷きがあって。紋合わせの技術があって。いろんな技術を競ってそこからまた新しい技術や文化ができて。

家紋が入った縁を納品することもあります。我が家の家紋を使用したいと言われ恵比寿のお寿司屋さんに納めさせて頂いたことがあります。
この写真は私の実家の提灯入れ。

丸に剣方喰、母の嫁入りにはこれを灯して田舎道を歩いたとか。見ているだけでしたが、小さな頃から座敷にあって象徴的で、お寿司屋さんの気持ちが嬉しくわかりました。絶対にこれしかダメって言いたいのではなく、その歴史や意味、想いや思い出を表現できる縁を、使用するしないは別にして大切にしていきたい。
押し付けないハンコ文化上等。
世界に誇れる”畳の縁”。