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  3. 畳のヘリを考える02:【対談】高田織物株式会社 高田尚志さん

畳表と畳床をつなぎ、畳の周辺を守るという、畳にとって大事な役割を持つ畳の縁(ヘリ)。畳の端、しかも畳の面積で占めるのはほんのわずか、そして近年はヘリ無し畳も登場。決して主役ではない。でも「端」に鎮座してきた意義はやっぱりあるのでは。「そもそもヘリとは」を改めて考えさせていただきたいと、岡山県倉敷市で畳縁を作り続けて130年の歴史をもつ高田織物株式会社の高田尚志さんを訪ねました。

「畳屋にとって縁はお客さんとワクワクを共有できる存在」(前田)

前田:畳屋にとって縁は、洋服にとってのボタンみたいな、それくらい欠かせない存在なのですが、畳屋にとって当たり前にありすぎて、改めてヘリとは?と考えるとなんだろうと。

高田(敬称略):そうですね、確かに言葉で表現するのは難しい。縁付きの畳というのは千数百年前には完成していた形ですもんね。縁の一番の役割はやっぱり畳表の角を補強するという点ですよね。畳は動いてないように見えても、常に歩いたり、いろんなところから力が加わりますから角が痛む。だから縁があることで畳を長持ちさせることができる。そして縁は畳表と畳床というパーツを繋ぎとめる存在でもあります。畳表が傷んできたら、縫い付けている縁を外して裏返ししたり、藁床のへこみをリペアして、また縁で繋ぐ。畳表や畳床を大事に使う、資源の少ない国だからこそ生まれた文化なんでしょうけど。

前田:はい、もちろんそういう畳を長持ちさせる役割は大きいと思います。あと、私たち畳屋にとって、縁はお客さんとワクワクを共有できる存在だなと感じているんです。

高田:なるほど。

前田:イグサは質の違いを説明した上で、「これがおすすめです」とご要望に沿ったご提案もしますが、縁は部屋の雰囲気とかお客様の好みもあるので、お客様と一緒に考えるんですね。カーテンは何色?とか家具はどんなものをお使いなのか?とか、どんな雰囲気がお好きなのか、とか。

高田:そうですか、私たちも畳屋さんがお客様とそういう時間を共有していただけるのは嬉しいです。

前田:先日も「前の縁は主人が決めたらから今度は私が決めるの」とおっしゃるお客様がいらっしゃいました。選択肢があることでストーリーができるんですよね。だから縁はお客様と我々との接点になってくれる貴重な存在だなと思うんです。

高田:どっちにしようかなと迷われているお客様に「じゃあ今度裏返しするときにこっちを使いましょうよ」とか話していただけるといいなと思ってるんです。その時も満足していただきながら、次も楽しみになる、みたいな。そうやって畳を楽しんでいただけるきっかけになれば。

「装う」喜び。

前田:でもひと昔前は黒色とか無難な色柄がほとんどだった縁ですが、高田織物さんがたくさんの色柄を作られるようになって縁の選択肢も格段に増えました。

高田:現在は1000種類ほどになったんじゃないでしょうか。人が人生で畳の縁を変えるのなんて、多くて3回くらいかなと思うと、こんなに種類いらないかなとか、何やってるんだろうなと思うこともあります。ただ、「縁ってこんなに種類あるんだ」とか、もっというと縁の存在を知っていただきたいというのがあるんですね。だから縁を自由に買っていただけるお店を会社敷地内につくったり、コロナ禍前はお客様に工場見学もしていただいたりしていました。やっぱりそれくらいしないといけないなと感じるくらい、縁は認知されていない。

前田:畳自体も使われなくなってきている中ですもんね。

高田:お店の販売は製造や出荷など全ての工程のスタッフが持ち回りでお店に立ってるんですが、自分たちが作ったものでこうやってお客様が喜んでくださってるんだと知ることで、次はどんなものをつくったらお客様の目が輝くんだろうとみんなが考えるようになりました。それでさらに柄は増え続けるわけですが(笑)。

前田:これだけたくさんの種類があると選ぶのも大変だけど楽しいでしょうね。高田さんはあまり売れないとおっしゃった柄がありましたが、お客様でその柄が大変気に入られて、色の違いで「壁の色に合わせるならこっちだけど家具に合わせるならこっちだし、、、」とめちゃくちゃ悩まれた方もいらっしゃいました。

高田:そうですか。どんなお部屋に合わせていただいたのか気になります。

前田:着るものでも、暖かければいい、というふうに機能さえあればいいはずなのに、人は「装う」。そう思うと、縁とは「装う」ということなのかもしれませんね。なぜ装うのか?というところにも縁の存在意義がある気がします。

自分だけの畳になる瞬間。

高田:うちの商品は「大宮縁」という商標なのですが、奈良や平安時代に宮中に仕えて優雅に生活していた人を「大宮人(おおみやびと)」と呼んでいたことから、自分たちの畳の上で過ごす人たちも優雅でありますように、という想いを込めて名付けたんです。おっしゃる通り、機能ではなくて、この縁で空間がどんなふうになるのか、そこで過ごす人はどんな気分になるだろうか、と思いを馳せながら作っている。主張しすぎず馴染みすぎもせず、どうさりげなく空間を演出できるのか、というのは非常に難しいですが。

前田:そういう想いでつくられたものをお客様が自由に選ぶ。そうやって空間がつくられるわけですね。


高田:そうですね、そうやって装うことを楽しむことで、「汚くなってきたときが畳の替え時」じゃなくて、「あの縁にしたいから畳を替えようか」となっていただければ嬉しいです。さらに、そうやって畳を楽しんでくださる方は、1000種類あっても自分だけの縁が欲しいっておっしゃる方もいらっしゃいます。好きな柄をオーダーいただいたり。

前田:なるほど。縁がつくことで「自分だけの畳」になるのかもしれないですね。縁はそうやって畳とお客様を繋いでくれるものだなと今日改めて感じました。畳屋としてこれからもお客様にしっかりと縁のことをお伝えできればと思います。

■高田織物株式会社

所在地:〒711-0904 岡山県倉敷市児島唐琴2-2-53

TEL: 086-477-7162

Website: https://ohmiyaberi.co.jp 

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